あらすじ
幼いときに両親に捨てられた14歳のRom (Tran Anh Khoa)は、それ以来、ホーチミン市でずっと路上生活を送っている。ありったけの機転と運を活用して生き延びてきたRomは、宝くじの当選番号予想表を売り、闇宝くじの胴元たちのために賭け金を徴収する「走り屋」として、貧しいながらも、かろうじて何とか食いつないでいる。ベトナムの公営宝くじ事業に便乗した不法賭博事業である闇宝くじは、Romがホームと呼ぶ古く荒れ果てた集合住宅の住人たちにとって、不可欠なものとなっている。
闇宝くじの幸運な当選者の気前の良さ次第であるRomの暮らしは、脅かされることになる。なぜなら、競合相手となるPhuc (Anh Tu)という名のもう1人の走り屋が、自分のしまを荒らし始めているからだ。いたる所で、Phucと対立せざるを得なくなっているRomにとって、唯一生き残るチャンスは、自分が本当に幸運を呼び込む人間であると、住人達に信じてもらうことだけだ。当選番号を当てる鋭い能力を持つRomは、自分の顧客を取り戻すチャンスに恵まれるが、Phucも予想で競い合うことなしに、顧客たちを手離したりはしない。
債権者たちに自分の自宅を差し押さえられ、その同じ債権者たちが戻って来て、債権の返済を要求してから、Romが取引していて、廃墟となりつつある集合住宅の住人たちは、今すぐにでも、自分たちがRomの幸運を必要としていることに気付く。他の選択肢は一切なく、住人たちは自分を救ってくれるRomの幸運に頼らなければならない。しかし、自分のことさえまともに守れないようなRomに、どうすれば住民たちを守ることができるのだろうか。
最初から最後まで、ローラーコースターのように目まぐるしく変化する『Rom』は、Tran Thanh Huyが監督した現実的な2019年の映画だ。